学術案内

EPAの薬理作用

1.抗血栓作用

健常男子8名にEPA3.6g/日1回投与、あるいは4週間連続投与後に、アデノシン二リン酸、コラーゲン、エピネフリンに対して有意差をもって血小板凝集が抑制された。そのメカニズムとしては、次のような可能性が考えられる

    1. EPAが血小板膜のアラキドン酸と置き換わり、このことによりトロンボキサンA2(TXA2)合成気質であるアラキドン酸量の低下をもたらす
    2. EPAの増加に伴い血小板の性状が変化し、血小板活性化に伴うアラキドン酸の遊離が低下するため、TXA2産生が低下する
    3. EPAがシクロオキシゲナーゼによるアラキドン酸代謝と競合抑制し、TXA2産生を低下させる。また、トロンボキサン合成酵素をEPAが抑制しTXA2賛成が低下する
    4. EPAから、シクロオキシゲナーゼにより血小板凝集抑制活性のないTXA3が多く産生される
    5. 血小板凝集を抑制する血管内皮細胞よりのプロスタグランジンI2(PGI2)、またはEPAを基質とし、I2と同等な活性を有するPGI3の産生を増加させる。さらに血管壁より血小板凝集活性のあるEDRF(endothelium derived relaxing factor)の産生も増加させる
    6. 12‐リポキシゲナーゼ系代謝産物による抑制
2.高脂血作用
    1. サバ缶228g(EPA2.27g、DHA3.2g、アラキドン酸0.20g、リノール酸0.50g含有)の実験食を健常人に1週間摂取させた。1週後には、血清総コレステロール値の有意な低下、HDLコレステロールの有意な増加、中性脂肪の有意な低下を認めた。(平井ら)
    2. 健常人にサーモンあるいはサーモン油を3週間投与した結果、血清コレステロール値、中性脂肪値は有意に低下した(Harris & Connor)
    3. 動脈硬化・血栓性疾患患者62人に、高純度のEPA製剤を体重60kg未満には1.8g/日、60kg以上には2.7g/日を投与し、投与前、4週、8週、16週後の血清脂質の変動を観察した。4,8,26週目のいずれでも、血清総コレステロール値、中性脂肪値は有意に低下していた。HDLコレステロール値は変わらなかった。
3.血液粘度の変化
    1. 千葉県の漁村部の住民と農村部の住民では、EPA摂取量は漁村部1.6g/日、であり、農村部は、0.7g/日である。血液粘度を調査したところ、漁村部のほうが有意に低かった。
    2. 魚油濃縮物のソフトカプセル(EPA21.4%含有)を健常人に、EPAにして1.4g/日を摂取させた。その結果、血液粘度は優位に低下し、その低下の度合いは、前値の高いほど著名であった。
    3. 高純度EPAを1日1.8~2.7gを投与し、血液粘度や赤血球変形能に与える影響を調べたところ、有意差をもって血液粘度は低下し、赤血球変形能は上昇した。同時に調べたヘマトクリットには変化がなかったので、血液粘度の変化は血液成分、特に赤血球の変化によると考えられる。赤血球変形能の上昇は、赤血球膜のEPA含量の増加と並行していたので、赤血球の膜流動性、柔軟性が増加したためと考えられる。
4.降圧作用、脳血管障害に対する作用
    1. EPA10gを本態性高血圧症の患者に4週間投与した結果、収縮期および拡張期血圧が低下した(Knappら)
    2. EPA1.6g+DHA1.1gを2型糖尿病患者に4~8週間投与したところ、収縮期、拡張期血圧とも有意に低下した(Kasimら)
    3. 閉塞性動脈硬化症を合併している本態性高血圧症患者に対する高純度EPA16週間投与の前後で、有意差をもって収縮期、拡張期血圧が低下し、心拍数に変化はなく、同時に測定した血清脂質の改善作用も認められた(西宮ら)
    4. 千葉県、茨城県の漁村地区と福島県の農村地区での疫学調査において、脳血管系疾患による訂正死亡率と魚肉摂取人口の多さの間には有意な逆相関が認められた
5.動脈弾力性保持作用・平滑筋細胞に対する作用

種々の研究により、高純度EPAによる動脈の進展性保持作用および脈波伝播速度の改善作用があることが判明している。この作用は、主として動脈の中幕障害に対する保護作用によるものと考えられる。

6.抗動脈硬化作用
    1. 動物実験においては人工血管移植後の内膜肥厚や血栓形成をEPAが有意に抑制する
    2. ブタ、サルの高コレステロール飼料モデル動物では、冠動脈、大動脈、頸動脈の硬化が魚油によって有意に抑制された。
    3. 高純度EPAにより閉塞性動脈硬化症の自他覚症状が改善することには、多くの報告がある
7.抗炎症作用
    1. EPAはシクロオキシゲナーゼの基質になりがたいが、リポキシゲナーゼの良い基質となり、袁紹で中心的役割を果たす白血球では、アラキドン酸由来のLTB4、LTC4、LTD4、LTE4と、これに対応するLTB5、LTC5、LTD5、LTE5が産生される。これにより、魚食系民族においては、自己免疫性の慢性関節リウマチ、乾癬、潰瘍性大腸炎などの慢性炎症性疾患の罹患率が低くなる。
    2. ラットの背部にair pouchをつくり、monosodium urateの結晶を注入する急性袁紹実験において、魚油投与群では、炎症の指標となる浸出液量も浸出液中のタンパク量も強く抑制されていた。(Tateら)
    3. 自然発症SLEモデルであるF1マウスは、生後5か月から免疫複合体による糸球体腎炎を発症し、その20週後には全例が死亡するが、魚油の入った飼料で飼育した群では、約半数が生存している。

EPAの臨床応用

  • 閉塞性動脈硬化症
  • 冠動脈形成術後の再狭窄予防
  • 高脂血症
  • 糖尿病合併症―特に神経障害と脂質代謝異常
  • 振動障害
  • 乾癬
  • 慢性関節リウマチ

に対して効果が期待され、研究が続けられています。

原典:「EPAの医学」
著者:富山医科薬科大学名誉教授熊谷朗

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